実験 09
走りながらボールを投げれば、ボールは足した速さで飛んでいきます。ところが光だけは、 どんなに速く追いかけても、向かっていっても、いつも秒速 30 万 km で進みます。 この 1 つの事実を認めると、時間と空間のほうが伸び縮みするしかなくなります。
見やすいように光をとても遅く描いています。宇宙船の中の人から見ると、光はまっすぐ上下に往復していて、自分の時計はふつうに進んでいます。 遅れて見えるのは、地球から見たときです(宇宙船から見ると、逆に地球の時計が遅れて見えます)。
加速や減速にかかる時間は入れず、はじめから終わりまで同じ速さで飛ぶとしています。 どれだけ速くしても光の速さには届かないので、地球で待つ人にとっての時間は「距離 ÷ 光の速さ」より短くはなりません。
横が場所(光年)、縦が地球の時計での時刻(年)。光は 1 年で 1 光年進むので、45 度の線になります。
2 枚の鏡のあいだを光が往復するたびに 1 回刻む「光時計」を考えます。 宇宙船に積んだ光時計を地球から見ると、光は鏡といっしょに横へも動くので、まっすぐではなくななめに進みます。 ななめの道のりは長いのに、光の速さは変わらない。だから 1 往復に時間がかかり、時計はゆっくり刻みます。 進み方は、三平方の定理から √(1 − 速さ²/光速²) 倍になります。
これは光時計だけの話ではありません。宇宙船の中の腕時計も、心臓の鼓動も、同じ割合でゆっくりになります。 もし光時計だけが遅れたら、船の中の人は 2 つの時計をくらべて「自分が動いている」とわかってしまいますが、 どの速さで動いていても物理の法則は同じ、というのが相対性理論の出発点だからです。
時空図の点線は、どちらの時計で測っても同じ経過時間になる点を結んだものです。 宇宙船の 1 年ごとの点は、ぴったりこの線の上に乗ります。 時間と空間は別々のものではなく、見る人によって「どこまでが時間で、どこからが空間か」の分け方が変わる、ひとつの時空なのです。 「同時」も見る人によって変わります。傾いた破線が、宇宙船にとっての「同じ瞬間」です。
上空 15 km ほどで生まれる素粒子ミューオンは、100 万分の 2.2 秒ほどで壊れます。 光の速さで飛んでも 660 m しか進めないはずなのに、地上でたくさん見つかります。 ほぼ光の速さで飛ぶミューオンの時計は、地上から見ると何十分の 1 にも遅くなっているからです。 GPS の衛星の時計も、速く動くせいで 1 日に 7 マイクロ秒ずつ遅れます(実験 06)。
時間の遅れを、実際に補正している装置の話です。
時間のもう 1 つの謎。なぜ過去と未来はちがうのでしょう。
重力そのものを動かす実験。地球と月で落ち方がどう変わるか。