実験 05
非常口に人が集まると、扉が空いているのに誰も出られない時間ができます。 そして「出口の手前に柱を置くと速くなる」とも言われます。邪魔物を増やして速くなる、とはどういうことでしょう。 上から見た部屋で、人を出口へ走らせてみてください。
人の並びは人数と「やり直す」ごとに変わります。同じ並びのまま柱だけ足したいときは「同じ配置でやり直す」を使ってください。
すいている 押し合っている 柱 押すのをやめている人
「避難させる」を押すと始まります。出口の前で人がどう詰まるかを見てください。
| 回 | 人数 | 急ぎ | 出口 | 進めないとき | 柱 | かかった時間 | 平均の流れ |
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「押すのをやめる/押し続ける」と「柱あり/なし」で 4 通りあります。 人の並びは毎回ちがい、1 回ごとのばらつきは効き目より大きいので、 いまのつまみのまま同じ並びで 4 通りとも計算して、まん中の値をくらべます。
| 進めないとき | 柱 | 全員が出るまで | 押し合いの平均 | いちばん上との差 |
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出口に人が殺到すると、扉の手前で人が互いに支え合ったアーチ(橋)ができます。 石橋と同じで、真ん中の人を押す力は左右の人が受け止め、その力はさらに壁へ逃げていきます。 全員が前へ進もうとしているのに、力がぐるりと釣り合ってしまい、誰も動けない。 しかも押す力が強いほど、このアーチはしっかりします。
上の部屋で、出口の前の人が濃い色になっているところがアーチです。 アーチは人のちょっとした揺らぎで崩れ、数人が流れ出て、また固まる。 出口から人が出てくるのが、なめらかな流れではなく途切れ途切れになるのはこのためです。 砂時計の砂やホッパーから出る穀物が時々詰まるのも、まったく同じ理屈です。
「押し続ける」に切り替えてくらべてみてください。押すのをやめる人がいると、 押し合いの強さは 4 割下がるのに、 全員が出るまでの時間は変わりません(60 人・25 回で、身動きの取れない時間も いちばん長い人で 3 割半減りました)。 我慢して押しても列は進まず、挟まれた人が動けなくなるぶんだけ損をする、ということです。 下の「4 通りをまとめてくらべる」で、柱との効き方の違いが数字で見られます。
柱は、出口の手前にできる力の集まる場所を肩代わりします。 後ろから押し寄せる力は柱が受け止め、柱の陰になった出口のすぐ手前は、押される力が弱いままになります。 アーチは「強く押されるほど固くなる」ので、そこを弱めてやると崩れやすくなる。
もうひとつ、柱は合流の角度を狭めます。 何もなければ人は扇形に広がって一斉に扉へ突っこみ、複数人が同時に到着してアーチの材料になります。 柱があると流れが左右の 2 本に分かれ、順番に扉へ着くようになります。 「ゆずり合う」のではなく、物の形のほうがゆずり合いを作るわけです。
柱を出口に近づけていくと、あるところから急に悪くなります。距離を 0.6m まで縮めてみてください。 柱と扉のすきまが人の幅より狭くなり、こんどは柱そのものが出口をふさぎます。 逆に 1.4m より遠いと、人は柱を避けたあとにまた扇形に広がってしまい、何も変わりません。 この装置で測ったかぎりでは 0.9〜1.1m 手前・中心から 0.5m ほどずらす あたりが良く、 45 人なら 3 割ほど早くなります。ずらすのは、左右どちらへよけるかの迷いを減らして流れを 2 本に分けるためです。
実際の非常口の前に物を置かないでください。 ここで速くなるのは「人が殺到して押し合っている」状態の話で、 しかも柱は建物を設計する段階で位置と太さを決めて据え付けるものです。 後から置いた物は、倒れる・動く・見えない・暗闇で足を取る、のどれかになります。 避難経路に物を置かないのは消防法で定められた義務でもあります。
ひとりを円で表し、出口へ向かう力+ぶつかった相手を押し返す力+接触面の摩擦+まっすぐ歩けないゆらぎ
の 4 つで動かしています。体は3 つの円(胴と左右の肩)でできていて、
画面に描いてある形がそのままぶつかり判定です。
肩を押されれば体は回りますし、肩幅より狭いすきまでは、体を斜めにして抜けていきます。
人が横歩きで人混みをすり抜けるのと同じことが、特別な指示なしに起こります。特別な「詰まる仕組み」は入れていません。
それでもアーチができて流れが途切れるのは、詰まりが個人の性質ではなく、集まったときの形から出てくるためです。
ひとつだけ、力とは別に持たせているものがあります。部屋の間取りです。 始める前に「その場所から出口まで、壁や柱を避けて歩くと何メートルか」を部屋じゅうで計算しておき、 人はその値がいちばん速く減る向きへ歩きます。人が部屋を見渡して道を選ぶのに当たります。 これが無いと、柱の裏や壁ぎわの行き止まりへ入り込んだ人が、出口の方角へ押し続けたまま出られなくなります (力の釣り合いだけで避けさせようとすると、細工をいくら足しても取り切れませんでした)。 通れるかどうかはいちばん体格の大きい人で判断させています。 平均の体格で計算すると、大柄な人が通れないすきまを道として選んでしまい、そこで詰まります。
模型なので、入っていないものもたくさんあります。転倒、将棋倒し、けが、恐怖の伝わり方、 後ろが見えないこと、煙や暗闇で出口を探す時間、係員の誘導、人を押しのけてでも前へ出ようとする気持ち。 ここでは全員が間取りを正しく知っていて、同じ道を選びます。 押すのをやめる判断も、全員が同じ基準で(ばらつきはあっても同じ規則で)行います。 とくに実際の実験では「急ぐほどかえって全体が遅くなる」という逆転が報告されていますが、 この模型では急ぐほど速く出られます。逆転には、上に挙げた転倒やけがのように、 この模型が持っていない要素が関わっていると考えられています。 数字は現実の避難時間の予測ではなく、形のちがいを比べるためのものとして見てください。
たくさん集まったときだけ現れる性質を、気体の粒で見る実験です。
止まるまでに進む距離。こちらも、間に合うかどうかの話です。